受験勉強

初雪の便りと共に
受験勉強の記憶が舞い降りる

かじかんだ手を休め
カーテンを少し明けてみると
かすかに見えるあの窓には
まだ明かりが点いていて

あいつも頑張っているんだな、と
自分を奮い立たせながら
再び問題集に取り組んだっけ

その甲斐あって
あいつは名門校に合格し
俺も無事に入学できた

同じぐらい勉強したんだから
当然と言えば当然だよな

ただ少し違ったのは
俺は教科書をン十回も読まなきゃ
頭に入らなかったことぐらい……

そんなことを思い出したのさ
あの三流校も
もうじき冬休みだと耳にして

無理難題

高所恐怖症の君は
ビルの屋上はおろか
タワーからの展望なんて
論外中の論外

それどころか
歩道橋さえも苦手だから
道の横断も
大回りに苦労するよね

全くこれじゃあ
観覧車のてっぺんで
夜景をバックのキスなんて
夢のまた夢か

いや、マイッタ……

できることなら
少しずつ慣れるべく
背中を押すんだけどなぁ

せめて僕だけでも
高い所が平気だったら

置いてきぼり

いつ以来かな
ここから街を眺めるのは

知らないうちに
高いビルが建ち
気づかないうちに
風の流れも変わっていた

楽しそうな場も広がり
人の往来も増えて
こんなに遠くまで
活気が押し寄せてくる

買い物をしている人も
食事を楽しむ人も
過ぎ行く時間の中から
パワーを吸収しているかのよう……

そしてそこに
ずっと取り残されているのは
変化をためらう
自分ただ一人だけ

顛 末

このバイトも長いな

今日も嫌な客にムカついたけど
ここまで続けてこれたのは
やっぱり
店頭で頑張るあのコのお蔭

裏でグッタリな時
通りすがりに笑顔をくれると
つらさもパッと吹っ飛ぶし
たまに一緒になる帰りも
わずかな会話だけで
なぜかとても癒されるからね

そろそろ
どこかに誘ってみようかな
オッケーだったら
より楽しく仕事ができるし
もしダメだったらもう
これを機に辞めればいい

いや、だけど
残された彼女が思い悩んで
これ以上細くなるのは困るし
さてどうするべきか!

う〜む…………

「で、どうなったんですか? 店長」

「こないだ女房に会っただろ
巨体に……
あれがその10年後だ」

「あら……」

マザー

母さん
俺はあんたを待ってたけど
あんたが俺を待つことは無かった

俺にはあんたが必要だったけど
あんたに俺は必要じゃなかった

だから
あんたに伝えたい言葉は
Goodbye……Goodbye

という
そんな歌詞を読みながら
込み上げてきたのは心憂さ
そして悲しさ……

なんて気持ちよりも
嬉しさや安心感……か

だってさ
代弁してくれたんだから
誰にも明かせなかった
この胸の内を

もっとも
今にしてみればもう
どうだっていいことだけど