忘れ形見

押入れの奥で
何年も冬眠していた
美術のクロッキー

掃除の手を休めて
ゆっくり紙をめくれば
思い出の風が吹いてくる
まさに最高のご褒美

そして3学期の終わりに
やっと出てきた君の似顔絵

ありのままを残そうと
丁寧に鉛筆を滑らせたのに
でも君には
何だか不評だったよね

こんなことなら
ウソでもいいから
もっと可愛く描けば良かったよ

消しゴムで修正して
少し口を開けたなら
君は「そうよ」って呟くのかな

何にせよ
このヘタなスケッチだけが
僕に残された全て

桜の花びらのように
新学期と共に消えた君の
永遠の忘れ形見さ