オーバーラップ

誰もいないはずの教室を
何かに誘われるように
ゆっくりと開ける

すると
そこにあったのは
逆光に眩しい君の微笑み

「え、どしたの?」

そう聞いてきたけど
尋ねたかったのは僕の方で
「何でもない」と
どうにか一言を絞り出し
ランドセルを揺らしながら
僕はその場を後にした

体中が熱くなったのは
息切れのせいだけじゃなかったはずの
二十年近くも前になる
そんな記憶を呼び起こしながら

逆光の窓辺に揺れて
子供をあやす君を見つめる

「え、どしたの?」

あ……いや
「何でもない」